「もう施設には入れない。お父さんを家に連れて帰る」──母の決意は固いものでした。
リハビリ病院の入院期限60日が迫る中、老健からは入所許可の連絡。なのに、当の母は首を縦に振りません。子どもたちがどんなに説得しても、関係が壊れそうになるほど母は頑なでした。
そんな家族を救ってくれたのは、まだ契約もしていないケアマネさんのひと言でした。
リハビリ病院の「60日ルール」|タイムリミットが迫る
父のいた地域包括ケア病棟には、最大60日しか入院できないルールがあります(病棟の種類と期限については以前の記事にまとめています)。
ソーシャルワーカーから「家に帰るか、施設に行くか、早めに決めてください」と言われ、私たち家族は選択を迫られていました。
老健か在宅か|家族と母の意見が完全に割れた
子どもたちが望んでいたこと
私たち兄弟は、「あと3ヶ月、老健でリハビリを続けてから在宅介護に移行したい」と考えていました。父の状態を少しでも安定させてから、安全に家へ迎え入れたかったのです。
母が望んでいたこと
一方、母の気持ちはシンプルでした。「もう施設には入れない。今すぐ家に連れて帰る」。
そんな時、申し込んでいた第2希望の老健──あの超強化型から、「入所できます」と連絡が届きました(第1希望に断られた経緯は前回の記事に書いています)。チャンス到来。でも、母を説得しなければなりません。
「在宅はダメ」私が譲れなかった理由
父は毎食前に痰の吸引が必要で、食事はミキサー食、一人では立つこともできません。高齢の母が一人でそれをこなすのは、客観的に見ても無理がありました。
- 誤嚥・窒息のリスク
- 転倒・骨折のリスク
- 救急搬送になった場合、これまでのリハビリが振り出しに戻る
叔母やケアマネさんは、本音は私と同じ考えだけど母の頑なな思いに「一度、在宅をやってみてもいいのでは」と言い始めました。でも私は、「もしものことが起きてからでは遅い」と、どうしても譲れませんでした。
母の気持ちも、痛いほど分かっていた
前回の退院騒動で、母は私たちに強引に退院を引き止められ、とてもショックを受けていました。父を家に帰したいという気持ちは、母の愛情です。病院で放置されているように見える父への憤りも、痛いほど分かります。
それでも、家に帰って命の危険があるとなれば、話は別です。みんなが納得する答えを見つけたくて、私たちも悩み続けていました。
ケアマネさんへの相談が、流れを変えた
「経験してみるのもいいのでは」から「引き受けられない」へ
困り果てた私たちは、ケアマネさんに相談しました。最初は「お母さんの気持ちはよく分かる。経験して無理だと分かれば、施設入所に進んでもいいのでは」というスタンスでした。
でも、私の話──父の状態、痰の吸引、家族の心配──を聞いてくれたケアマネさんは、考えを変えてくれました。
ケアマネさんが言ってくれた言葉
「お父さんは痰の吸引が必要です。お母さんがそれをできないなら、私はケアマネを引き受けることができません」
母を騙すようで、少し申し訳ない気持ちもありました。でも、父の命を守るためには仕方がない──私たちは、その方向で進むことを決めました。
母からの連絡|「老健に入れることにした」
数日後、母からメッセージが届きました。
「老健に入れることにしたよ。ケアマネさんが引き受けられないって言ったから、仕方がない」
そして入所日の手続きには、まだ契約もしていないのに、ケアマネさんが付き添いで来てくれることになったそうです。契約前なのに、ここまでしてくれるなんて──心から感動しました。
このケアマネさんがいなければ、家族はバラバラになっていた
私たち兄弟がどれだけ説明しても、母の気持ちは動きませんでした。それどころか、あのまま続けていたら、家族の関係が壊れていたかもしれないほど、対立は深刻でした。
ケアマネさんのひと言が、父の老健入所を実現させ、家族を守ってくれたのです。
良いケアマネさんと出会えるかどうかで、介護の未来は大きく変わる。そのことを、私は身をもって実感しました。
救急搬送から始まった父の入院生活は、こうして次の場所──超強化型老健へと移っていきます。老健での父の暮らしとリハビリの日々は、また新しい章として書いていきます。

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