お父さん、夜に暴力行為があります。認知症の周辺症状だと思います」──看護師長からそう告げられました(この経緯は前回の記事に書いています)。
突然の言葉に戸惑いながらも、私はどうしても納得できませんでした。自分で確かめようと、病棟の看護師さん一人一人に話を聞くことにしたのです。すると、看護師長から聞いた話とは全く違う事実が出てきました。
「暴力行為」と「痛みへの反応」は、同じではありません。この記事は、家族として動いたことで見えてきた、病院の情報伝達の現実の記録です。
看護師一人一人に聞く|父は夜、どう過ごしていますか?
私は早速、「母が在宅介護を目指しているので、参考に父の夜の様子を教えてもらえますか?たとえば暴れることがあるとか──」と、3人の看護師さんに質問しました。
みなさんすぐにパソコンの記録を調べてくれて、近くの看護師さんにも「どうやった?」と声をかけて確認し、私に伝えてくれました。
3人の看護師の答えは「暴力はない」
「よく眠っているみたいですよ。起きていることもありますが、静かに過ごしてます」
「暴れたり、暴力したりはないですか?」と念を押しても、どの看護師さんも「それはないです」とはっきり答えました。
4人目の看護師だけが「蹴られます」と答えた理由
話が違う。違和感を覚えた私は、さらに別の看護師さんに同じ質問をしました。すると──
「蹴られます。結構何回か」
なぜこの人だけ答えが違うのか。「どういう状況でしたか?」と詳しく聞くと、父はおむつかぶれになっていて、薬を塗る時に蹴られるのだそうです。その看護師さんは言いました。
「痛いんだと思います」
「暴力行為」ではなく「痛みへの反応」だった
私は、こう推測しました。看護師長は現場の看護師から「蹴られます」という報告だけを聞き、それを医師に伝え、「認知症の周辺症状」という診断につながったのではないか。
「夜、理由もなく暴れる」のと、「痛い処置の時に足が出る」のとでは、意味がまったく違います。もし私が地元にいて定期的に面会できていたら、もっと早く気づけたかもしれません。遠く離れた場所で、母からの電話だけが父の情報だったこと。それが悔しく感じられた出来事でした。
家族が直接聞きに行って、初めて分かること
今となっては、帰省して納得いくまで聞いて回って本当によかったと思っています。丁寧に対応してくださった看護師さん、理学療法士さんには感謝しています。
医師や看護師長の話と、家族が知っている本人の姿がずれていると感じたら、現場で直接働いているスタッフに具体的に聞いてみることをおすすめします。「いつ・どんな状況で・どんな行動があったか」を確認するだけで、見えてくるものが全然違います。
認知症の周辺症状(BPSD)とは|暴力と痛みの反応は違う
認知症の周辺症状(BPSD)とは、認知症の中核症状に伴って現れる行動・心理症状のことです。
主な症状には、行動症状として暴力・暴言、徘徊、介護への抵抗・拒否、不眠・昼夜逆転など、心理症状として幻覚・妄想、抑うつ・不安、無気力・無関心などがあります。
周辺症状は、本人の不安・痛み・環境の変化・コミュニケーション不足などが引き金になることが多いとされています。
父のケースで言えば、おむつかぶれの痛みで看護師さんを蹴ったことが「暴力行為」として報告された可能性があります。痛みを言葉で伝えられない状態での行動は、認知症の周辺症状ではなく「痛みへの正常な反応」である場合もあるのです。
家族として、「なぜその行動が起きたのか」を現場のスタッフに具体的に確認すること。この経験から、その大切さを強く感じました。
そして私たちは、本格的に施設へ向けてアポを取り、見学をして情報を集めていきました。そのことは次の記事で紹介します。


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