在宅介護を強行しようとした母と家族の衝突|遠距離介護で意見が割れた理由と父の認知症診断

リハビリ病院

「要介護5の父を家に連れて帰りたい」──母の強い意志は、止まりませんでした。

毎食前に痰の吸引が必要で、食事はミキサー食、一人では立てない父を、高齢の母が一人で介護する。家族全員が反対しましたが、母はすでにケアマネを探し、退院の準備を進めていました。

遠距離介護で家族の意見がバラバラになる。そんなことが本当に起きるとは、思ってもいませんでした。

母が勝手に退院手続きを進めていた

リハビリ病院では、「喉が渇いた」と言えない父に水分補給をしてもらえなかったり、トイレに行きたいと言っても「おむつにしてください」と言われたり。毎日面会に行っている母は、すぐにでも退院させたいと思っていました。

そして母は、自分で電話をかけてケアマネを探し、家を見にきてもらい、在宅介護の準備を始めていたのです(このケアマネさんとの出会いが後に家族を救うことになるのですが、それは別の記事で書きます)。

要介護5の父を、在宅介護はできない|家族が反対した理由

この時の父は、毎食前に痰の吸引をし、食事はミキサー食。一人で立ち上がることも歩くこともできない状態でした。そんな父を、高齢の母が一人で介護する。

病院側は母の強い意志を受け、「何かあってもうちでは面倒を見ませんよ」という条件で退院を許可する構えだったそうです。

家族はみんな、在宅介護に反対でした。理由は2つ。共倒れする可能性が高いこと。そして、父の安全を守れないことです。

「入院を続けたら認知症になる」母と、「共倒れになる」私

病院の引っ越しの日が近づき、とうとう退院かこのまま入院かを決める日がやってきました。

「このまま入院していたら、お父さんは認知症になるかもしれない。1週間も面会できなくなる前に、早く退院させないと」と母。

「迎え入れる準備もしないで家に帰って、もしものことがあったら?」「共倒れになったら、誰がお父さんを見るの?」と私。

電話は平行線のままでした。その後、弟が病院に「退院はしない」と伝え、退院はなくなりました。

退院を阻止した日、母との連絡が途絶えた

弟が県外に戻り、母が一人になった日の夜。兄弟の誰が電話をしても、母と連絡が取れなくなりました。その日の朝の私と母の電話、そして弟の病院への返答が原因でした。

実家には母一人。兄弟で交代で連絡しても、誰も繋がらない。母は家にいるのか、無事なのか。心配だけど、誰も確認に行けない。

私は近くに住む親戚に電話しました。親戚が実家に様子を見に行ってくれて、母が無事なことを、ようやく知ることができました。

母が退院を急いだ、もう一つの理由|1週間の面会禁止

母が退院を急いだ背景には、病院の引っ越しで1週間面会できなくなる不安がありました。

毎日面会に行き、水分補給をしてきた母がいない1週間。父は誰とも話をせず、喉が渇いてもお腹が空いても何も言えないまま過ごすことになる──母の不安は限界に達していました(この頃の父の状態は前回の記事に書いています)。

私が帰省して、職員みんなに父をお願いした

「退院はさせられない。でも私が帰省して病院に行き、母の代わりに“面会禁止の間父に声をかけてほしい、水分補給をしてほしい”と職員のみなさんにお願いするから」。私は母にそう約束しました。

思いがけない帰省で、1ヶ月ぶりのリハビリ病院。「退院の件ではご迷惑をおかけしてすみません」と言うと、看護師さんも理学療法士さんも「退院なくなってよかった〜」と安心した様子でした。現場から見ても、今の父の状態での在宅介護は厳しいという見解だったようです。

そして、理学療法士さん、看護師さん一人一人に、「母が毎日面会に来て水分補給をしていたので、面会に来られない1週間が心配です。母の代わりに水分補給をお願いします」と伝えて回りました。

父が帰ってくると楽しみにしていた母の気持ちを思うと、これが本当に一番いい方法だったのかと、考えることもありました。それでも、在宅介護ができなくなった母に少しでも安心してほしい。そう思って考えた行動でした。

清掃員さんへのお願い|1ヶ月前の挨拶が繋いだ縁

職員さんと話をしていると、部屋の端で手を振っている人がいました。あの清掃員さんです。

「わあ〜久しぶり!いつもありがとうございます。今日沖縄から帰ってきたんです」と声をかけると、「沖縄なん?だからずっと来てなかったんやね」と清掃員さん。以前の記事に書いた通り、私はこの病院で清掃員さんに会うたびに「いつも綺麗にしてくれてありがとうございます」と声をかけていました。清掃員さんは父のことも覚えていて、時々声をかけてくれていたそうです。

そこで、「今度1週間面会禁止になるので、お掃除で通りかかった時だけでいいので、父に声をかけてもらえますか?」とお願いしました。清掃員さんは快く引き受けてくれました。1ヶ月前、この方に声をかけていて本当によかった──心からそう思いました。

看護師長の一言|「夜、暴力行為があります」

看護師さん、理学療法士さん、清掃員さんと話し、父の周りが明るい雰囲気に包まれていた、その時でした。

看護師長に会うと、こう言われたのです。

「お父さん、夜に暴力行為があって、医師は認知症の周辺症状だと言っています」

そんな話は聞いていませんでした。どういうこと?──戸惑った私は、自分で調べて真実を突き止めようと決めました。その内容は、次の記事で書きます。

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